マラソン世界歴代100傑のうち過半数をケニア人が占めています。故に、ケニアは「マラソン大国」と呼ばれ、数多くのトップランナーを輩出してきました。ケニアの中でもマラソンの聖地と呼ばれる「イテン」。今回は聖地「イテン」のトレーニング場所や内容について説明します!
ケニアとはどんな国?
ケニアは、人口4970万。面積は59、3万平方キロメートル(日本の約1、5倍)。
首都はナイロビで、公用語はスワヒリ語と英語です。西にウガンダ、南にタンザニア、東にソマリアと国境が接しています。アフリカ最大の港、モンバサがあります。
通貨はケニア・シリングで1KESがおおよそ1.0965円(2018年11月現在)となっています。
主な仕事は農業であり、地方だと平均月収が日本円で15,000円〜20,000円と貧困の問題を抱えています。交通手段は、車や「マタトゥー」と呼ばれる相乗りタクシー、バイクタクシーなどがあります。
ケニアの陸上長距離界を席巻する2大部族
ケニア人・・・と聞いてまず想像するのが、高くジャンプする「マサイ族」という人も多いのではないでしょうか?マサイ族の中にもランナーは存在しますが、それほど多くありません。
マラソンを含め、トラック競技(800m〜10000m)やハーフマラソンなどの陸上長距離界で活躍する部族が主に2つあります。
キクユ族
キクユ族は、首都のナイロビあたりに多い部族です。特徴としては、身体つきが筋肉質であり陸上長距離界の中でもトラック競技の5000m・10000mで活躍する選手が多いです。ちなみにナイロビの標高は約1600mです。名前の付け方の特徴として、お世話になった人の名前をつけることがあり、お世話になった人が多いと名前が長くなることもあります。
カレンジン族
カレンジン族は、首都のナイロビから飛行機で1時間ほど北西に進んだ、標高2000mほどのエルドレットというケニアで4番目に大きい都市に多い部族です。特徴としては、特に細身の体型のランナーが多く、マラソンで活躍する選手が多いです。カレンジン族は名前の特徴として「キプ」がつく人が圧倒的に多く、キプ◯◯の◯は、天気や生まれた場所などによって決まるそうです。
マラソン大国ケニアの聖地「イテン」
エルドレットから車で1時間ほど離れたところにイテンという町があり、最もマラソンランナーを輩出している地として知られ、「マラソンの聖地」と呼ばれています。標高は2400mほどで、1月〜2月頃にはマラソンの聖地でトレーニングをしようと、多くのヨーロッパ人が訪れケニア式トレーニングを体験しています。
また、町の入り口には「チャンピオンズゲート」と呼ばれるゲートがあり
「WELL COME TO ITEN HOME OF CHAMPIONS」
「THANKS FOR VISITING HOME OF CHAMPIONS」
と書かれています。
今回は、ケニア人の中でもマラソンの聖地であるイテンで活動するケニア人ランナーについて書いて行きます。
トレーニング形態
ケニア人ランナーは、高強度トレーニングは集団で行うことがほとんどです。ここでの高強度トレーニングは普段のジョギングではなく、インターバルトレーニングや距離走などの負荷の高いトレーニングを指します。では、具体的にどういった集団(グループ)で行うか説明していきます。
マネジメント会社(エージェント)の契約選手で構成するグループ
有望なケニア人選手は、18歳前後になるとエージェント(マネジメント会社や代理人)と契約します。契約することで、スポーツブランドとの契約や海外のレースに出場するチャンスが多くなります。大きなマネジメント会社だと、同じマネジメント会社に所属している選手達でグループを構成することがあります。この場合は、現地コーチもしくはマネジメント会社のスタッフがトレーニングサポート(トレーニング場所への送迎・給水)を行います。
仲の良いランナーのグループ
マネジメント会社や代理人と契約していてもグループがない、もしくは契約していない選手は、自分達でグループを形成します。これは普段から仲の良い選手達が集まって自分達でグループを作ります。この場合はトレーニングサポートはほぼありません。
何となく合流する
これは最初の走り出しは別だけども、同じコースで遭遇した場合、そのまま一緒に走るというケースです。この場合は大抵途中からペースが上がり、最後は負けじと無言で競走となることが多いです。
主なトレーニング場所
モイベンロード
イテンの町から車で25分ほど。標高2200m〜2000mほどで片道35kmを土のコースで走ることが出来ます。主に距離走などの長い距離を走りたい時に使用するコースです。
タンバッチグラウンド
イテンの町から車で20分ほど。標高1930mの場所にある400mの土トラックです。主にインターバルトレーニングなどのスピードトレーニングで使用するコースです。
MOI UNIVERSITY
イテンから車で1時間。エルドレットの大学にあるグラウンドです。標高は2100mほどで土の綺麗なグラウンドです。こちらも主にスピードトレーニングで使用しますが、タンバッチとの標高差などでこちらと使い分けることがあります。
その辺りの道
これは文字どおり、その辺りの道です。しかし片道30kmのアップダウンに富んだ土のコースや、この後説明するファルトレクトレーニングで使用する不整地のコースなどたくさんの走れるコースがあります。
上記以外にも、宿泊施設の所有する全天候型のトラック(外部は有料)や舗装道路のコースもあります。
参加条件なし!訪れたランナーが一度は参加する、大集団のファルトレクトレーニング
誰でも参加可能なファルトレクトレーニングです。
ファルトレクトレーニングとは疾走期と休息期を繰り返すトレーニングです。
車でトレーニング場所に移動できないランナーや、中には移動できるけれどもこのトレーニングメニューをグループ内で取り入れているところもあり、多くのランナーが参加します。参加人数は200人から400人ほど。一斉にスタートする様は圧巻です。
ただし注意点として、スタートは休息期からです。
日本や他の国だと通常、トレーニングのスタートは速いペースとなる疾走期から始まります。よってスタート同時にペースを上げます。しかし、ケニアですと初めは休息期から始まります。日本や他の国とは疾走期と休息期が逆となります。
初めて参加する外国のランナーでこのシステムを知らない場合、スタートと同時にペースを上げて
「あれ?どうなっているの?」
という状況になります。
主なトレーニングで1×1×20(ワン・ワン・トゥエンティ)。1分間ペースを上げ1分間ペースを落とす、これを20回繰り返す。というメニューがあります。他にも疾走時間が長い時もあります。
ちなみに毎週火曜日・木曜日で時間は9時スタート(雨で濡れている場合は時間変更有り)。スタート場所も決まっています。
基本的なトレーニングプログラムがある!?
トレーニングメニュー
イテンでのトレーニングには、基本となるプログラムが存在します。
火曜日:スピードトレーニング(ショート)
【例】600m×12 R=100”
木曜日:スピードトレーニング(ロング)
【例】5’×7 R=3′
土曜日:ロングラン
【例】30km
日曜日:休養
上述のように、火曜日・木曜日・土曜日が目的別の高強度トレーニング、日曜日は休養となります。それ以外の月曜日・水曜日・金曜日は、アップダウンのコースで脚づくりをするフォレストランや、ゆっくりのペースで疲労物質を除去するためのジョギング、かなり速いペースでのジョギングなどを組み合わせます。
ケニア人ランナーの特徴としてほとんど舗装道路を走りません。ケニア人は芝や土の不整地でのトレーニングを好みます。
トレーニング実施の時間帯
ケニアでのトレーニングは朝方行うことがほとんどです。時間としては6時〜7時にはスタートすることが多いため、トレーニング場所への移動やウォーミングアップの時間を含めると、5時ぐらいに出発することが多く、あたりは真っ暗です。
理由として
朝方はあまり雨が降らず安定した気候でトレーニングができる
年間を通して朝晩が涼しく、日中気温が上がるため、気温の上がる前にトレーニングを行う
この2つの要因が大きいです。また、ケニア人ランナーは雨だとほとんどトレーニングをしません。
「ケニア人は寒がりで雨による冷えを嫌う」
「土のコースが雨で泥濘んで滑るため走れない」
といった要因が挙げられます。
これらがイテンでの基本的なトレーニングプログラムとなります。しかし、これは皆が行っているわけではなく、アレンジしたりコーチによっては全く違うトレーニングプログラムを実施しているグループもあります。
イテンを拠点とする海外強豪ランナー
ケニア人以外で、イテンを拠点としているランナーが何人かいます。
有名選手ですと
ゼーン・ロバートソン(ニュージーランド)
ジェイク・ロバートソン(ニュージーランド)
ソンドレ・モーエン(ノルウェー)
ジュリアン・ワンダース(スイス)
です。彼らは1年間のほとんどをケニアで過ごします。ジェイク・ロバートソンは、イテンに11年間住んでおり、今では家を購入して住んでいます。
いかがでしたでしょうか?ここで紹介したトレーニング内容などはほんの一部です。ケニアは治安が危ないというイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、そこまで危険ではなくイテンに関しては治安は悪くありません。
もし興味を持ったり、一度行ってみたい!と思った方はぜひイテンでファルトレクトレーニングに参加してみたください!
現在、ケニアのイテンを拠点としたランニングチーム「RDC KENYA」のサポーター募集中