持久性パフォーマンスを高める高強度ジャンプトレーニング

前回の記事「理論で紐解く!〜筋トレが持久性パフォーマンスを低下させるって本当?」では、持久系アスリートが高強度の筋力トレーニングをやるべき理由について科学的知見を交えて解説しました。
では、実際にどのように高強度の筋力トレーニングに取り組めばよいのでしょうか? 今回は“実践編”として具体的なトレーニングメニューについてお話します。

なお、高重量のウエイトトレーニングを行うのはリスクが伴うため、専門のトレーナー等の指導下で行う必要があります。本記事では自体重で行う高強度の筋力トレーニングとして“ジャンプトレーニング”を5つご紹介します。

高強度のジャンプトレーニングを行う際のポイント

①なるべく短い接地時間で、なるべく高い(遠く)に跳ぶように意識する

②回数やセット数を少なくして、その代わりに一本一本に集中する

③週に2~3回行う。なお、試合期に筋トレ効果を維持するだけなら週1回でもOK!

 

ミニハードルジャンプ(両脚)

〇効果・狙い
下肢3関節(足・膝・股関節)を固定したまま地面に力を加えられようにする

〇ポイント
・ミニハードルやコーンなどの障害物を3~4足長(約1メートル)間隔で並べる
・足首や膝・股関節が大きく曲がらないように(潰れないように)接地時に脚を突っ張るように力を入れる
・慣れてきたら、ハードルの高さにとらわれずなるべく高く跳ぶ
・腕も使ってなるべく高く跳ぶ

 

ミニハードルジャンプ(片脚)

〇効果・狙い
片脚支持でしっかりと地面を蹴られるようにする
中臀筋などバランス力に貢献する部位も鍛えられる

〇ポイント
・ミニハードルやコーンなどの障害物を3~4足長(約1メートル)間隔で並べる
・両脚の時よりも膝や股関節が潰れやすくなるので注意!
・空中で脚を素早く前にスイングして次の接地に備える

 

タックジャンプ

〇効果・狙い
ミニハードルジャンプよりも跳躍高が高くなり強いキックが必要になる(負荷がより高くなる)
空中で股関節を素早く屈曲することで走りに重要な股関節屈曲筋群も鍛えられる

〇ポイント
・その場でなるべく高くジャンプする
・空中で膝関節と股関節をすばやく折りたたんで抱え込むようにジャンプする
・なるべく接地位置を揃える(ふらつかない!)

 

ボルゾフジャンプ

〇効果・狙い
片脚でなるべく高く跳び体重を受け止めるため、腿裏やお尻など股関節伸展筋群に強い負荷がかかる
バランスをとるのが難しく、中臀筋などバランス力に貢献する筋に強い負荷がかかる
総じて強い負荷がかかるため、やりすぎに注意すべきだがトレーニング効果は高い

〇ポイント
・片脚立ちで前屈の姿勢をとり、指先が地面に軽く触れるようにする
・なるべく高くジャンプし接地時に体重をしっかりと支え再び指先が地面に触れるくらい位置にもどる
・なるべく接地位置を揃える(ばらつきを抑えるのが困難であるがなるべく揃えようとするのが重要)

 

バウンディングジャンプ

〇効果・狙い
高く(垂直方向)よりも遠く(水平方向)に跳ぼうとするため、より走行時のキックに近い
高スピードで移動しながら体重を受け止めるので強い負荷がかかる

〇ポイント
・高さよりも遠くに跳ぶように強調する(もしくは決まった距離をなるべく少ない歩数で跳ぶ)
・助走をつけてある程度スピードに乗った状態で跳ぶ
・接地時に脚首や膝・股関節が潰れないように注意!

 

ホッピングジャンプ

〇効果・狙い
バウンディングよりも強い負荷がかかる
片脚のみを使うため空中で素早く脚をスイングするトレーニングになる

〇ポイント
・バウンディングと同様に、助走をつけてなるべく遠くに跳ぶように強調する
・バランスをとる中臀筋などにも強い負荷がかかる

トレーニングメニューの組み方・注意

・1種目ごとに10ジャンプ×2~3セット程度を行う。

・なるべく両脚を使うものと片脚を使うもの、高く跳ぶものや遠くに跳ぶものをバランスよく組み合わせる

・トレーニング初期(1~2週間)は合計ジャンプ数を40回程度に留める(オーバートレーニング防止)

・慣れてきたら徐々に総ジャンプ数を増やし、100回程度を上限とする

・目的の試合にむけて最低4週間以上取り組む

・鍛錬期には週に2~3回取り組む。試合期には週1回程度でも能力をさらに高められないが、一度得たトレーニング効果はある程度維持できる。

・怪我の防止のため、なるべく固い路面を避ける or  十分にクッションのある靴を着用する

 

まとめ

これまでにランニングエコノミー向上などの効果のあるジャンプトレーニングについて5つご紹介しました。
様々な事情によりウエイトトレーニングのような高重量のトレーニングができない場合でも比較的簡単に取り組むことができます。

ぜひ、皆様のトレーニングにご活用ください!

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

東京大学大学院 博士課程(運動生理学) 日本学術振興会 特別研究員DC2 東京大学陸上運動部コーチ 科学的知見に基づいたトレーニング情報の発信を目指します。 短距離〜長距離走まで幅広い選手のコーチングを行なっています。